(韓国民衆言論 チャムセサン<真実の世の中> 2007年12月19日)
http://www.newscham.net/news/view.php?board=news&nid=45572
(韓国大統領選挙結果)
参与政府を継承する‘実用政府’を予告
行政権力の、資本権力への従属性の深化だ
● 今後も、特別検察官の捜査対象となる、嘘で固まった<イ・ミョンパク新大統領>
● 次期政権は、参与政府の“親資本と市場化政策”の拡大強化を生み出すだろう
● 87年以降、労働者民衆が血と汗で掘り起こしてきた民主主義的空間の解体が進んでいる
● 資本と政権の社会統合に反撥する、社会構成員の抵抗が新しい政治の可能性を引き上げる
(本文から)
嘘で、ごちゃ混ぜになった政権が誕生する。出口調査(19日、20時46分)の結果、有権者の半分が、イ・ミョンパク(李明博)候補に票を投じた。土壇場の動画効果(イ・ミョンパク自身が、不正株価操作をしたBBKに関係したことを認めたビデオが暴露されたー訳注)は、不十分だった。イ・ミョンパク候補は投票前日まで、TV演説でさえ動画と関連したコメントをしなかった。経済を生かすことが出来る人は、自分だけだと支持を訴えた。‘失われた10年’の怨念解消でもするように、17代大統領誕生を目の前にしている。
検察発表(イ・ミョンパクに疑惑はないと言うー訳注)が事実だとすれば、イ・ミョンパク当選者(08年2月25日の就任までは、<当選者>という呼称である。-訳注)は、詐欺師に乗せられた経済大統領になり、動画が事実であれば、自身が創立した会社でないと否認した嘘経済大統領になる。イ・ミョンパク当選者は、特検(国会が議決した、イ・ミョンパク不正疑惑を捜査する、検察から独立した<特別検察官>-訳注)を受けいれたが、当選者と業務引継ぎ委員会の仕組みと、特検の過程が、どんな関数関係を結ぶのかに従って、特検の結果も意のままになるのだ。イ・ミョンパク当選者の運命が決まるかどうか、政治物議と一緒に正月弾劾の風に繋がるかどうか、現在では、全てが未知数だ。
明らかなことは、総選挙を前にして、議会権力で有利な位置を占める為の政治勢力間の対決が、過去どの時よりも、熾烈な様相を帯びるはずだと言う点だ。最近、議会で、より多い持分を占めるための政党間の競争が広がるなかで、政治勢力の生成・分化と両立に、両党(2党)構造での収斂(取りまとめ)の代わりに、多党構造での拡散が予告される。ここに、イ・ミョンパク当選者に対する圧倒的支持は、行政権力優位の党情関係の構築につながることが出来ると言う点も、目を留める重要な場面だ。
一方、大統領選挙、土壇場の局面で、一角にはBBK捜査発表と関連したノ・ミョンパクのビックディール説がちょろちょろと流れ出た。イ・フェチャン候補側は、選挙中立、またBBK捜査問題と退任後の保障をめぐって、ノ・ミョンパク・コネクションを既定事実化する態度を見せた。事実、当否が確認されることは無かったが、サムソンの機密費とBBK捜査をめぐって、現政権と次期政権間に、政治的妥協が成り立ち得る情況は、あったように見える。参与政府(ノ・ムヒョン政権)が、今までサムソンと維持してきた蜜月関係の側面でもそうであり、キム・ヨンチョル弁護士のサムソン機密費暴露と、特検推進過程で見えた態度を推察すると、(ノ・ムヒョンの)退任後の政治的身動きの保証は、極めて差し迫った問題だからでもある。
韓米同盟強化、派兵(アフガン、イラク等-訳注)、韓米FTA(自由貿易協定)、非正規法、資本市場統合法の推進など、参与政府の‘親資本政策’の脈絡で見るとき、行政権力の移譲は、イ・ミョンパク(李明博)当選者と次期政府の政治的色滞と関係なく、その連続性が保障されるように見える。これは、イ・ミョンパク当選者が公言してきた公約と政策を推察して、疑いが無い。
参与政府の末期、議会と行政府は、サムソン特検とBBK特検を通過させた。
ノ・ムヒョン大統領が任命したイム・チェジン検察総長に対して、キム・ヨンチョル弁護士は、かれを賄賂検事として烙印を押したが、BBK特検の捜査対象には、‘BBK捜査チームの検事’が含まれた。二つの特検が進行される過程でイム・チェジン検察総長が、召喚される情況が広がるかも知れない。三権分立の側面で見るとき、司法権力は、法が定める政治的審判の舞台裏の機能を含めることをする。
しかし、行政権力への従属性が深化されるほど、司法権力の権威と機能が、やはり失墜する以外ありえなくなる。いま、二つの特検の成立は、司法権力が我が社会の重大な政治的事件に対して、独立的に捜査を担保する能力がないとか、最悪な水準をみせてくれる。今回、キム・ヨンチョル弁護士のサムソン機密費暴露で推し量っても、司法権力に対する資本の影響力は、すでに相当な水準に到達したものと類推される。
このように、サムソン機密資金問題とBBKを取り囲んで広がる、三府(司法・行政・立法)権力間の政治的緊張関係は、資本権力と離しておいて説明するのが難しい。‘参与政府’の‘実用政府’への転換は、親資本権力としての、行政権力の平和的移譲を意味する。従って実用政府の首長としてのイ・ミョンパク当選者の道徳性と、嘘の当否は、政治的に致命的な弱点となるが、同時に権力の再生産の側面で、いくらでも収斂、希釈されることが出来ると言う点も、見過ごすことは出来ない。
現代社会で、人民は自身の生存と、社会・経済的生活(生命)の保障を受ける為に、選挙を通して国家権力に統治を委任する。委任された行政権力は、公共領域に対する民主主義の政治機構を、稼動するものとして、社会経済的政策と社会統合の為の支配秩序を構築する。周知のように、有権者二名のうち一名は、イ・ミョンパク候補に票を投じた。これはこの土地に住んでいる社会構成員の社会経済的要求の表出であると同時に、深まる(社会の)両極化の苦痛から脱出する為の次善の選択として解釈される。
イ・ミョンパク当選者個人の、道徳性と関係なく、進歩と保守の理念と関係なく、経済が生き返れば、不便不当な人生(いのち)の与件(与えられた条件)も変えることが出来るはずだと言う一抹の期待感が、参与政府の失政に対する反発とともに、イ・ミョンパク候補に対する支持に繋がったのだ。
しかし、イ・ミョンパク当選者と、もうすぐ構成される実用政府が、資本権力から自由に出来るかは懐疑的だ。外為危機以後、資本は公共領域に挑戦的な浸透を継続してきた。韓/米FTAは、公共領域の全体を対象として市場化するという性格を浴びている。これは、87年以降、労働者・民衆が、血と汗で掘り起こしてきた民主主義的空間の解体と、同時平行で進行している。参与政府は資本の要求を大部分受容したし、イ・ミョンパク当選者は、やはり、教育、医療、エネルギー、文化、メディアなど、あらゆる政策にあって、公共性の無視、排除と効率と競争の市場化を骨子とするという点で、以後実用政府は、参与政府の市場化政策を拡大強化するものとして予想される。
これは、社会支配構造と社会構成員の、社会経済的要求に対する資本統治力の強化の必然性を、予告するのに、ここで実用政府が、腐敗と嘘の反復露出と、両極化の深化に対する経済的対案を出すことが出来ない場合、政権の政治的不安定性は、参与政府のときより更に、尖鋭な危機状況を反復することとなるであろう.従って、イ・ミョンパク当選者と実用政府成敗の当否は、社会統合能力に沿って思い通りになるものであり、ここで社会統合能力の物的基盤は、資本、乃至(ないし)資本権力から出てくることと為る。資本の危機管理能力が即、行政権力の社会統合能力を可能にする定規になるのだ。
言い換えれば、資本と政権の社会統合に反発する社会構成員の抵抗が、どんなに表出されるか?に従って、新しい政治の可能性も引き上げられると言うことだ。
保守過剰の、今回の大統領選挙の結果が、見せるまた一つの示唆点として、保守ー改革ー進歩の理念的スペクトロムが、政治勢力間の差別や、離合集散の一次的準拠で作用しないとか 弱化されると言う点も深思塾考する重要な場面だ。
(訳 柴野貞夫)
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